四谷いーぐるで行われたイベントに行ってきました。
概説は一つ前の記事に書いたとおりこれです。
いーぐる後藤の新ジャズ日記より
第516回 11月30日(土) 【15:30より】
●村井康司・新刊出版記念イヴェント
この度、『JAZZ 100の扉』(アルテス・パブリッシング)という本を刊行しました。ビバップから21世紀ジャズまで、100枚のCDを選んで好きなことを書いたもの。各アルバムには、関連作2枚を参考として挙げてありますので、300枚のアルバムを紹介しました。巻末にはピーター・バラカンさんとの対談が掲載されています。ゲストに音楽評論家の湯浅学さんをお迎えして、本に掲載されている作品から二人がセレクトした盤をかけてお話ししようと思っています。当日は本の即売も行います。ご参加をお待ちしております!
解説 村井康司 湯浅学
講演は村井さんと湯浅さんが1940's~After 2000まで10年の区切りごとに二枚ずつ選んでそのうち一曲づつをかけながら進むというものでした。
進行は1940's→After 2000→1950's→1990'sと本で言うと初めと終わりから真ん中に向かって進むという方式。
一曲づつしかかからなかったので実際はこの倍リストが有りました。
―選曲リスト―
(artist 『album』 (year) / track) ◇村井さん選曲 ◆湯浅さん選曲
◇Charlie Parker, Dizzy Gillespie 『Town Hall, New York City, June 22, 1945』 (1945) / Groovin' High
◆Fats Navarro 『Nostalgia』 (1946,47) / Fats Blows
◇Otomo Yoshihide's New Jazz Orchestra 『Out to Lunch』 (2005) / Something Sweet, Something Tender
◆Bill Frisell 『Disfarmer』 (2008) / I Am Not A Farmer
◇Herbie Nichols 『Herbie Nichols Trio』 (1955,56) / House Party Starting
◆Art Pepper 『Modern Art』 (1956,57) / Blues In
◇Kenny Wheeler 『Music For Large & Small Ensemble』 (1990) / Sophie
◆Hal Willner 『Weird Nightmare : Meditations on Mingus』 (1992) / Eclipse
◇Duke Ellington 『Money Jungle』 (1962) / Money Jungle
◆Albert Ayler 『Spiritual Unity』 (1964) / Spirits
◇菊地雅章 『Susto』 (1980,81) / Circle/Line
◆Lounge Lizards 『The Lounge Lizards』 (1980) / Do The Wrong Thing
◆Gil Evans 『Svengali』 (1973) / Eleven
◇Ornette Coleman 『Dancing In Your Head』 (1973,76) / Theme From A Symphony (Variation two)
この日のいーぐるは満員状態。
初めにいーぐるの後藤さんが「この村井さんの本はほんとにいい本だからこれからジャズを聴くって人ももうジャズファンも買って損はないです。是非買ってください。買わないと店から出しませんよ。暴力ジャズ喫茶なので。」と挨拶?つづいてアルテスの鈴木さんが「ホントはアルテスの一発目にこの本をもってこようと思ったけどもう75冊目になってしまった。」みたいな話からスタート。
講演は二人が実際にインタビューした時の話やライブを見た話、逸話など含めてすごく和やかに楽しく進んでました。
講演の中で僕が特に面白いなと思った話を書くと、
・Fats Navarroのこのアルバムは特に歪み成分が多い。ビバップ期のガレスピー以外のトランペット奏者が持つ独特のトランペットのベルが振動するような歪みって良いよね。
・ONJOの『Out to Lunch』には大友さんの繊細な所がすごくよく出ている。笙が入ってることもあって雅楽的だよね。
・(上に関連して)「即興性の無さ」と「持続音を重ねていくところ」に関して電子音楽と雅楽ってすごく近い。俺は雅楽も電子音楽も大好き。(湯浅)
・ONJO『Out to Lunch』とEric Dolphy『Out to Lunch』はわざと両方入れた。(村井)
・Thelonious MonkとHerbie Nicholsは「ゾウムシ」と「カメムシ」。今聴くと逆に新しい、面白い。
・90'sからはKip Hanrahan, Hal Willnerみたいに「歴史の読み直し」の時期があった。
・渡辺貞夫は入れるか迷ったんだけどあの人のすごさって総合力のすごさみたいなところがあって一枚に絞れなくて入れられなかった。70年代の『Round Trip』とかは好きでよく聴く。(村井)
・Lounge Lizardsの出た80年代って世の中がYMOだった時代で、そこにアート・リンゼイが出てきた。このアルバムはアート・リンゼイ入でプロデューサーはテオ・マセロ。
・やっぱりBill Frisellが好き。(村井)
・この二人でやるとやっぱり選曲がドロドロ系になって面白い。ゲストを湯浅さんにしてよかった。
という具合でした。
という具合でした。
特に良かった曲は、
Kenny Wheeler 『Music For Large & Small Ensemble』 (1990) / Sophie
Duke Ellington 『Money Jungle』 (1962) / Money Jungle
Gil Evans 『Svengali』 (1973) / Eleven
でした。(Gil Evansだけたぶん会場でかかったものと違う音源ですが)
で、ここからは本も含めた僕の感想、というかあとがきなんですが
僕としてはやっぱり90年代が抜け落ちているなぁという感覚は正直ありました。
Joshua Redman, Kurt Rosenwinkel, Mark Turner, Brian Blade, Christian McBrideなどの世代が抜けているって話は前の記事にも書いたけど。今一番勢いがあるベテラン勢という枠にいるのはこの世代なわけでここをどう消化していくのかという問題。
正直90年代は駄作がすごく多くて、「Hip-HopとJazzの融合!」みたいに帯に書いてあっても全然かっこよくないアルバムとかがめちゃくちゃあるから100選に入るような、サキソフォン・コロッサスと並ぶようなアルバムってそもそもあるのか?という気はしますが。
あとこれは終演後にでた話なんだけど、
やっぱり「今のジャズをどう過去とつなげるか」、具体的に言えばLouis ArmstrongとRobert Glasperをどう一本線でつなげるか、って事に今みんな悩んでるわけで、そこでのキーワードがやっぱりこの駄作が多かった90年代とHip-Hopの登場にある。あるんだろうけどそこを解説するにはジャズファンが聴いてなかった音楽(Hip-Hop, New Soul, ネオアコ, シカゴ音響派, デトロイト・テクノetc....)を沢山聴かなきゃいけなくてそこも含めて解説するのはすごく難しいって話はずっと残る課題で、どんどんジャズファンとジャズマンのズレが生じていくのかなという気はしました。
毎回でる話で言えば聴き手の世代間のギャップというのもすごく感じて、例えば僕はDerrick Hodge『Live Today』をRadical Face『Ghost』とかのポストロック的なものと結びつけて聴いたんだけど(→前記事参照)その感覚がもう違うんだろうなって。
それはBrad MehldauがRadioheadのカバーをやって「Radioheadってなんだ!?」ってなったり、Robert GlasperがCommonを呼んで「Commonって誰だ!?」ってなったりするって次元だけじゃなくて、「音楽を聴いてどこをおいしいと感じるか」がそもそも違うのかなって。
その違いを考えると僕が山下洋輔『キアズマ』に感じる「面白さ」と村井さんが感じる「面白さ」にもやっぱり違いがあるんだろうなと感じました。
でもこの感覚はネガティブなものじゃなくて、例えば世代間じゃなくてもDJがハードバップに見出す「面白さとジャズ研部員が見出す「面白さ」もやっぱりきっと違うわけで、問題はそれだけ違う面白さを含んでいる「ジャズ」ってやっぱり面白いなぁと。
長々と書いてしまったけど、村井さんが本のイントロダクションで書いていた「ジャズも雑食のほうが楽しいと思うよ、ぜったい」という言葉を引用すれば、「音楽も雑食のほうが楽しいと思うよ」っていうのが僕の姿勢です。っていうか今のジャズを100%楽しめてる人は絶対そういう人だ!
正直90年代は駄作がすごく多くて、「Hip-HopとJazzの融合!」みたいに帯に書いてあっても全然かっこよくないアルバムとかがめちゃくちゃあるから100選に入るような、サキソフォン・コロッサスと並ぶようなアルバムってそもそもあるのか?という気はしますが。
あとこれは終演後にでた話なんだけど、
やっぱり「今のジャズをどう過去とつなげるか」、具体的に言えばLouis ArmstrongとRobert Glasperをどう一本線でつなげるか、って事に今みんな悩んでるわけで、そこでのキーワードがやっぱりこの駄作が多かった90年代とHip-Hopの登場にある。あるんだろうけどそこを解説するにはジャズファンが聴いてなかった音楽(Hip-Hop, New Soul, ネオアコ, シカゴ音響派, デトロイト・テクノetc....)を沢山聴かなきゃいけなくてそこも含めて解説するのはすごく難しいって話はずっと残る課題で、どんどんジャズファンとジャズマンのズレが生じていくのかなという気はしました。
毎回でる話で言えば聴き手の世代間のギャップというのもすごく感じて、例えば僕はDerrick Hodge『Live Today』をRadical Face『Ghost』とかのポストロック的なものと結びつけて聴いたんだけど(→前記事参照)その感覚がもう違うんだろうなって。
それはBrad MehldauがRadioheadのカバーをやって「Radioheadってなんだ!?」ってなったり、Robert GlasperがCommonを呼んで「Commonって誰だ!?」ってなったりするって次元だけじゃなくて、「音楽を聴いてどこをおいしいと感じるか」がそもそも違うのかなって。
その違いを考えると僕が山下洋輔『キアズマ』に感じる「面白さ」と村井さんが感じる「面白さ」にもやっぱり違いがあるんだろうなと感じました。
でもこの感覚はネガティブなものじゃなくて、例えば世代間じゃなくてもDJがハードバップに見出す「面白さとジャズ研部員が見出す「面白さ」もやっぱりきっと違うわけで、問題はそれだけ違う面白さを含んでいる「ジャズ」ってやっぱり面白いなぁと。
長々と書いてしまったけど、村井さんが本のイントロダクションで書いていた「ジャズも雑食のほうが楽しいと思うよ、ぜったい」という言葉を引用すれば、「音楽も雑食のほうが楽しいと思うよ」っていうのが僕の姿勢です。っていうか今のジャズを100%楽しめてる人は絶対そういう人だ!
0 件のコメント:
コメントを投稿