2013/12/07

「素敵なイスラエリー」:イスラエル・ジャズマン特集。














「路上の素敵なイスラエリーと名前なんかない猫と行く」
と歌った「CITY LIGHTS」が入っているandymori『ファンファーレと熱狂』(2010年)は今でも愛聴盤です。


今日はそんな「素敵なイスラエリー」の話題。イスラエル・ジャズマン特集です。




まずこの記事を書こうと思ったことのきっかけが12/5に新宿PIT INNで観たOmer Klein Trioのライブだということを最初に書いておきます。

すごかったんです。

イスラエルのジャズマンが今すごいんです。
でもいまいち認知されてない感があるので気になるけど聴けてない人達に向けて、の記事です。

なんだか壮大なタイトルにしてしまったけど僕が聴いてる範囲で世代順に重要っぽい人を7人選んでみました。
何度か登場する「イスラエル感」という言葉は僕なりに分析した所、スウィングでもグルーヴでもないリズムとメロディのオリエンタル感ですたぶん。
最後まで読んだ頃にはみなさんにもなんとなく伝わることを願います。


Omer Avital (bs) b.1971


アフロ!サングラス!ストール!と三拍子そろったベーシストがOmer Avitalです。
骨太のサウンド、壮大なオリジナル曲、そして弾いてる姿がすげぇ楽しそう!
世代的にはBrad MehldauとかKurt Rosenwinkel、Chris Potter、Vijay Iyerとか同世代ですね。
彼のオリジナルは壮大とか雄大ってイメージが強いです。これはイスラエルのジャズマンみんなに言えることなんですけど彼らが演奏する曲はオリジナルが圧倒的に多いですね。
中でもOmer Avitalの曲は"Free"とか"Peace"とか"Future"とかタイトルからスケールの大きいものが多いです。
多分ハードバップ好きには彼の曲とってもウケると思います。

おすすめアルバムはAvishai Cohen(tp)、Joel Frahm(sax)のダブルフロントにJason Lindner(pf)、Johnathan Blake(ds)を加えたQuintetでの『Live at Smalls』で!
動画はこれと同じメンバーによるライブです。

イスラエル人のAvishai Cohen(tp)、Yonatan Avishai(pf)、Daniel Fridman(ds)とのユニット、「Third World Love」、Aaron Goldberg(pf)との「OAM Trio」、「"Yes!"Trio」の2つのトリオもオススメですよ。

Live at Smalls Yes! Songs & Portraits





Avisai Cohen (bs) b.1970


Omer Avitalと同じ世代のベーシストで彼も有名ですね。
1997年からチック・コリアのバンドにいたってことで有名になったらしいです。
見た目はOmer Avitalとは対照的にストイックそうな感じで服装もルーズじゃないです。でもBeatlesの「Come Together」とかもやっちゃうあたりそうじゃないのかも。
演奏はというとやっぱりそんな感じ。そしてテクニックがすごいです。
僕はピアノ・トリオでの彼の演奏が好きです。
というわけでハードバップ好きとかよりはやっぱりChick CoreaとかBrad Mehldauとかあたりが好きな人におすすめです。

彼のオススメアルバムは若手の天才Shai Maestro(pf)を迎えた『Gently Disturbed』、のライブ盤『Night of Magic』で!
動画は2011年のアルバム『Seven Seas』から「Seven Seas」。天才Shai Maestroとのトリオによる演奏で彼のコンポジションの魅力とベーステクニックが堪能できます。

ナイト・オブ・マジック Gently Disturbed Seven Seas






Oz Noy (gt) b.1972


今回の企画の中で一番「え?こいつイスラエルなの?」感があるのが彼です。
他の人達に比べて明らかに「イスラエル感」を漂わせない、というかジャズギター感も漂わせない曲者です。
色んな所で「Blues」を取り上げるのも彼のスタイルの特徴です。
ストラト、テレキャス、歪み、ワウ、エフェクトとなんでもあり!
セロニアス・モンクの曲をワウ踏みまくりでファンクにしたりしてます。
でも自分のHPには「僕のやってることがジャズに聞こえないかもしれないけどジャズだよ!」って書いたり、自分のエフェクターボードを掲載したりしてギタリスト心を感じさせてくれる彼が大好きです。

よく色んな所で取り上げられるのは最新作の『Twisted Blues vol.1』ですが、ぼくのおすすめはピコピコ電子音から始まる爽快な『Fuzzy』で!
動画はセロニアス・モンク「Epistrophy」の彼なりの解釈「Epistrofunk」です。

ファジー Vol. 1-Twisted Blues Schizophrenic (Dig)






Avishai Cohen (tp) b.1978


さっきのベーシストと同姓同名です!ややこしい!
この二者はiPodやiTunesを困惑に陥れ、YouTubeやAmazonの検索結果を混沌へ誘います。
世代的にはRobert Glasper(pf)、Eric Harland(ds)と今のジャズを代表する世代ですね。
このあたりから先がよく「第二世代」といわれる時代ですね。彼もモンクコンペ入賞という今っぽいステータスを持っています。
Omer Avitalとの作品のほか、SF Jazz Collectiveや兄妹との3Cohensとかでも活躍しています。
彼はイスラエル・ジャズに限らず現代トランペットの代表格といえるでしょう。ハードバップ的でもありつつオリエンタルというか「イスラエル感」もあわせ持っています。
この髪型とヒゲは一度見たら忘れられません。

おすすめアルバムは前述のOmer Avitalも参加のコードレストリオ作TriveniシリーズのⅡ。大事なことなので二回言います『Triveni II』ですよ!Ⅱ!
動画はTriveniメンバーによるスタジオライブ映像。このトリオのいいところが詰まってます。

Triveni II Music of Stevie Wonder and New Compositions: Live in New York 2011 - Season 8 Tightrope




Omer Klein (pf) b.1982


やっとここまで来た!冒頭に書いたピアニストです。
世代的にはAaron Parks(pf)、Tayer Eigsti(pf)、Gerald Clayton(pf)と同じとピアニストには大変そうな世代ですが頑張って欲しいです。
今年12月のツアーが初来日らしく客席もまぁそれなりというくらいの埋まり具合でした。
ライブで観た彼の印象はまずピアノのコントロールが完璧で「一気にそこまで落とせんのかよ!」というキメに何度もやられました。そしてその度バンドメンバーの息がピッタリ!
この人に限らずですがやっぱりアルバムメンバーで観たほうが良いです、ぜったい。
クラッシックっぽいしっとりしたイントロからじわじわと盛り上がっていって爆発する様はほんとにため息もでるほど見事で歓声もあがるしCDも売れる、と大好評ライブでした。

そんな彼のおすすめは今年2013年の新譜『To the Unknown』で!(というかそれしか聴いてない笑)
動画はしっとりイントロから~が楽しめる「Fear of Heights」と迷ったけどイスラエル感たっぷりの「Yemen」です。

To the Unknown Rockets on the Balcony Song #1





Gilad Hekselman (gt) b.1983


僕が大好きなギタリストです。
ギタリストとしてはJulian Lageとか同じく80年代組。この世代を前の記事で「無機質に歌わせる」世代では無くなったと書いたんだけどほんとにそれを感じます。(前記事参照→
いわゆる教科書的なフレーズはなくてほんとに自由、それでいてメロディはすごく美しいというギタリストです。
Ari Hoenig Trioでも活躍していましたね。
彼は「イスラエル感」は薄めなんだけどそれはメンバーがNYの最先端メンバーということもあるのかな?と思います。そして彼自身Kurt Rosenwinkel以降のジャズギタリストで最有力株の一人です。
Julian Lageが好きな人におすすめ、とは言いがたい気もするんですがKurt Rosenwinkelをちょっと無機質だなぁと感じる方、プログレテクニカル路線はあんまり.....という方におすすめです。

おすすめアルバムはMark Turner(sax)、Joe Martin(bs)、Marcus Gilmore(ds)という豪華メンバーを迎えた今年の新譜『This Just In』で!同メンバーの前作『Hearts Wide Open』もおすすめです。
動画は新譜のタイトル曲「This Just In」のアルバムメンバーによるライブ映像。

This Just In [輸入盤] Hearts Wide Open Splitlife





Shai Maestro (pf) b.1987


最後に紹介するのが一番の若手の彼です。
2008年にリリースされたAvishai Cohen『Gently Disturbed』の時点でなんと21歳!
若手ピアニストで一番注目されているかもしれません。
Chick Corea、Danilo Perez、Brad Mehldauなどの有名ピアニストとも共演した、らしい。
彼もOmer Kleinと同様美しいサウンドと緻密なコンポジションが特徴です。

おすすめアルバムは新作『The Road To Ithaca』で!というかリーダー作はまだ二枚しかでてないのでAvishai Cohen Trioでの方が作品はあるかも知れないです。
動画は新作の一曲目「Gal」のライブ映像。

Shai Maestro Trio The Road To Ithaca Shai Maestro






とまぁ7人紹介してきましたが記事があまりに長くなったのでこのへんで。
ホントはHerbie Hancockの『Gershwin's World』にも参加してRon CarterともバンドやってたサックスのEli DegibriとかフルートのItai KrissとかギターのYotam Silbersteinとかもっと色々いるんですが。。。

でもここまで色々聴いてみたら多分僕の書いてる「イスラエル感」伝わると思います。
Omer Kleinのライブ時にも衝撃をうけて呟いたんですが「『Swing』とも『Groove』とも違う方法論なのにすげぇジャズしてる!」というこの音楽は、現代ジャズのブラック・ミュージック、Hip-Hop接近組、テクニカルプログレ組、とかと並んでもうひとつのジャンルになるんじゃないでしょうか。
僕はこれからも目が離せません。

最後に参考にしたURLを紹介して終わります。


【参考】

・【総力特集】 イスラエル・ジャズメンの群像を追って - HMV ONLINE http://www.hmv.co.jp/news/article/1210260007/
イスラエルという国のことがよくかいてありました。イスラエルの空気が少しわかる気がします。

・【特集】 イスラエル・ジャズメンの傑作を追う - HMV ONLINE http://www.hmv.co.jp/news/article/1210260006/
僕の記事には載ってないアーティストの事、もっとちゃんとしたプロフィールとか来歴が知りたい人はこちらを見てください。

・第17回 誰でもわかる!?年齢別イスラエル・ジャズマン特集! - 「DJ 大塚広子の神保町JAZZ」 - ナビブラ神保町   http://www.navi-bura.com/special/j-jazz_1309G.php
サクッとポップな文体で最近のイスラエルジャズマンについて書かれています。

・駐日イスラエル大使館 http://embassies.gov.il/TOKYO/Pages/default.aspx
最近のイスラエル・ジャズマンのライブは大抵大使館の後援がついていて大使館でもちょいちょい無料ライブをやっています。メールマガジンに登録するとライブ情報、新譜情報なども届くので登録するのもいいかもしれません。配信も月一ですし。


あと最近ジャズ系のライブハウスとかによく置いてあるこれは上のリンクのうちのHMVのものと繋がっているようです。
僕が確認する限りBlue Note Tokyo, Cotton Club, 新宿PIT INNあたりはあると思います。

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