『Jazz The New Chapter ~ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平』
監修:柳樂光隆 シンコーミュージック・ムック
「コルトレーンの時代にヒップホップやYouTubeがあったら、ジャズは別物になっただろう。
そこに生まれたのが俺たちの世代だ」--Robert Glasper
21世紀以降のシーンを網羅した世界初のジャズ本!
ハンコックからニルヴァーナやレディオヘッド、J・ディラにフライング・ロータスまで乗りこなす
スリリングな最新系のジャズを300枚を越えるディスク評と示唆に富んだインタビュー/テキストの数々で紹介。 バック・カタログだけじゃない、これが“今"のジャズだ!
執筆陣
柳樂光隆、原雅明、吉本秀純、稲田利之、江利川侑介、北澤敏、小浜文晶、小林栄一、廣瀬大輔、藤岡宇央、益子博之、山本勇樹、吉田ヨウヘイ、四浦研治、若林恵、小熊俊哉
巷で噂の最新ジャズ本。2014.02.14発売。
前半はタイトル通りRobert Glasperを中心にかかげて、Robert Glasperのディスコグラフィー、原雅明による90年代からのジャズmeetsヒップ・ホップの歴史、Chris Dave・Mark Colenburg・Derrick HodgeのRobert Glasper Experimentのメンバーのインタビューを含む彼らの音楽性・ルーツ・視点に迫る内容。
後半は近年のジャズの動向としてBlue Noteレーベルの動き、Esperanza Spalding・Kendrick Scott・Brad Mehldauなどにスポットを当てた解説、Jazz+MoreとしてFork, Indie-Rock, Beat Music, World Musicなどとの接近を解説していく。
豊富なインタビュー+2000年代から選んだアルバム100枚のディスクガイド付き。
一通り読んでまず感じたのは少し前の村井康司『JAZZ100の扉』(別ページ有り)が歴史にそって進んでいくディスクガイドだったのと対照的に、ここで示されているのはタイトル通りジャズの"地平"であり水平的なジャズシーンの解説であるということ。
この"水平的"に対して「ジャズの歴史」ということについてこの本も含めていくつか言説を抜き出すと、
柳樂光隆はこの本の冒頭でこれまでのジャズ本は歴史をたどる形式で書かれており、"「80年代以降のジャズについては歴史を"一応"なぞる程度に書かれていた」"と書いている。
中山康樹はこの本のなかで"一般的に認識されている「ジャズの歴史」とは、ジャズの「スタイル変遷史」にほかならない。"と書き、有力ないくつかのスタイルの存在を前提としたその歴史は様々なスタイルが林立していくにつれてその歴史はとだえて無意味化し、それ故にそのような史観の線上にRobert Glasperたちの音楽を置くことは出来ないとしている。
村井本の最後、ピーター・バラカンとの対談の最後にピーター・バラカンは"誰もが「これはジャズだ」って言える音楽は『Bitches Brew』の時代に終わったと思う。"と記した。
ここで言われているジャズの歴史が死んだ、死んでないという言説はとりあえず置いておくとして、
ただのいちリスナーである僕からすれば大きな歴史よりもアーティスト本人の言説や、AmazonやLast.fmがおすすめしてくれる「似ているアーティスト」やYoutubeの関連動画が"ディグる"ことの入り口である。(その背景には結局少なからず歴史は存在しているのだろう)
そんないちリスナー的には水平的なガイド+インタビュー多めのこの本はまさにツボでした。
僕が面白かったのは後半の他ジャンルとの接近についての部分ですね。
Hip-HopはもちろんSSWやインディー・ロック、テクノまで様々なジャンルとの交錯が見られて、しかもそれぞれの記事を書いてるのがジャズ評論家だけでなくワールドミュージックのライターをはじめ日本版WIREDの編集長から吉田ヨウヘイGroupの吉田ヨウヘイまでというのは面白いです。
僕はChicago Underground Duoなどのシカゴ音響派からポスト・ロックからジャズに入った人間なのでそこが充実しているのもまさに「待ってました!」ってかんじです。
そしてカラーページ多め+大判なのも好感です。
現代ジャズを聴きたい人、っていうよりはこれはジャズリスナー以外の方が面白く読めるかもしれない。
あと個人的に推していたRichard SpavenとPortico Quartetが取り上げられていて嬉しいです。
あと個人的に推していたRichard SpavenとPortico Quartetが取り上げられていて嬉しいです。
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