2014/03/28
Kris Bowers / Heroes & Misfits
Concordjazz (UNCO-1139)
Recorded by Chris Allen at Sear Sound, December 11th-14th 2012
Member:
Kris Bowers - piano, Fender Rhodes, Synthesizers)
Casey Benjamin - Alto Saxophone(track 3, 4, 6, 8), Vocoder(track 3)
Kenneth Whalum III - Tenor Saxophone(track 3-6, 8), Soprano Saxophone(track 3)
Adam Agati - Guitars
Burniss Earl Travis II - Electric Bass
Jamire Williams - Drums
Special guests:
Julia Easterlin - Vocals(track 5)
Jose James - Vocals(track 10)
Chris Turner - Vocals(track 3, 6, 7)
僕としてはJose Jamesのピアニスト、というイメージだった若手ピアニストKris Bowers。
Jose Jamesのバンドの他にはNext Cllective、Marcus Miller『Renaissance』(2012)、Jay-Z&Kanye West『Watch the Throne』(2011)など幅広く活動している彼のメジャーデビュー盤がConcordからでた。
これまでのリーダー作は2010年には日本盤の『Blue In Green』(ポニーキャニオン)のみ。Ben Williams(b)、Clarence Penn(ds)とのトリオで日本制作盤ならでは?のChick CoreaとかHerbie HancockとかBill Evansの曲ばっかりやらされていた彼だが、この時(録音は2008年)大学二年生というから驚き。
メンバーで知られてなさそうな人をざっと紹介すると、Kenneth Whalum IIIはJay-Z、Justin Timberlakeのバックなどで活躍するサックス奏者、Adam AgatiはKrisと同じくMarcus Millerのアルバムに参加しておりジャズ以外でも活躍する若手ギタリスト、Burniss Earl Travis IIはGretchen ParlatoやMarc Caryと共演、ERIMAJにも参加するベーシスト。
つらつら書いているけど僕はレビューのこういう部分を読むのがあんまり好きじゃないからとっとと内容にいこうと思う。
アルバム全体のイントロ的な#1の余韻を切り裂くように四つ打ちのバスドラ、ギター、シンセサイザーが突っ込んできて本編がスタート。この時点でもうこれまでのジャズアルバムとは違う雰囲気を纏っている。
去年話題になったSam Crowe Groupの様ないわゆる現代のジャズっぽいの#3、ローズの浮遊感が心地よい#4、Andy Scottの様に音響的かつスローなダブっぽい#5、Chris Turnerの温かいボーカルが乗った#6 Wonder Loveなんかはネオソウルの香りがする。
#9-#10のしっとりとしたピアノソロからエレピのトレモロと重ねられたJose Jamesのボーカルが心地よいバラードへというラストの流れは圧巻。
このアルバムはKris Bowersのもつ様々な音楽の要素が詰め込まれていると言われているが、本当に内容は多種多様でiPodで掛け流していると今何のアルバムを聴いているのかわからなくなるほど。
アルバム全体を通して感じることはピアノとローズの重なり方にしても、サックスやギターの配置にしても、ものすごく質感・空間に気を使って作られているというところ。ポストプロダクションに相当時間がかかっているんじゃないかな。録音が2012年だから2年以上かけてミックスしていることになる。
僕としては実はこれが一世代上のRobert Glasper Experimentとの大きな違いなんじゃないかと思う。そして同時にこないだレビューしたNir Felder『Golden Age』(別ページあり)との違いのような。
ExperimentやNir Felderがセッション的に録音したものに何かを重ねたりしているのに対して、おそらく素材を録ってそれを配置していくというPro Tools的な考え方がすごく感じられた。
面白いのはKris Bowersを含めてメンバーはExperimentよりもだいぶソロを弾いていること。
これについて考えていた時にちょうど面白いインタビューが出てきた。
“インタビュー:ミニマリズムと音響的アプローチ、コンポジションと即興性が交差する未知の領域――“21世紀ジャズの来るべきかたち”rabbitoo - CDJournal CDJ PUSH http://www.cdjournal.com/main/cdjpush/rabbitoo/1000000958”
日本のポスト・ロック的なジャズバンドrabbitooのインタビューなんだけど、この中でリーダーでギタリストの市野元彦、ドラムスの田中徳崇はこう語っている
市野「rabbitooではサックスがバーっと吹いてたり、ソロ的なセクションもあるけど、そこはソロじゃなくてそういう雰囲気で、っていうのは言っている。人生を語るところじゃない。形式的に順番にソロを弾いていくようなジャズ・フォームの曲もあるんですけど、ただのサウンド、なんかローズのいい感じのサウンドっていうように演奏してもらっている。意識としては全然違うものをやっているってことですね」
田中「やっぱりサンプリング以降派だから。人の音で成り立つことを経験しちゃってるからね。要はどう組み立てるかですよね」 (両抜粋)
rabbitooも同じようにポストプロダクション的な意識・感覚があるバンド。ジャズ新世代の感覚はもう"ポスト・ジャズ"なのかもしれない。
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