アンサンブルとテクスチャー。僕はこの2つが近年のジャズ界に起こっている変化だと思う。
今回はこのテーマで新譜を紹介してみる試み。
これはあくまで私見であり試験だ。
「アンサンブルの時代」という言葉は多分僕は村井康司さんから聞いた。
すごく大雑把に言ってしまうとこれは大人数による音楽であったりあるいは「すべきこと」が決まってる音楽であると僕は理解している。
アンサンブルというと最近だとMaria Schneider Orchestraであって、そこから遡ってGil EvansであったりCharlie HadenのLiberation Music Orchestraあって.....という流れが浮かんでしまうのだけど、ここで言われているのはそういう事じゃなくてもっと少人数、それまでコンボジャズの領域だった場所にあらわれたアンサンブルのことだと思う。
みんなでテーマを演奏した後、各々のソリストがバトルのごとくソロを展開していき全部終わったらもう一度テーマ、そして勝者と敗者をわけるのはソロの出来と観客の盛り上がりという音楽ではなく、アンサンブルに創りだされる音楽の総体にこだわる、例えば誰かのソロであってもそのバックのサウンドであったりととにかく音響の総体にこだわった音楽が僕にとって「アンサンブルの時代」の音楽だ。
熱量を問題としないという点ではこの中でLennie Tristanoらのクール・ジャズが再評価されるというのは至極当然の流れのだと思われる。
ここで僕のなかでまず浮かぶのはBrian Blade & The Fellowship Bandと橋爪亮督グループだ。
どちらにも手に汗握るようなソロや感動的な掛け合いやバースバトルというものは無く、音楽の総体 、あるいは重なった音像のアンサンブルに重点がおかれた音楽だと思う。
この様なスタイルの新譜では、
Fabian Almazan 『Rhizome』 (2014)
Brian Blade & The Fellowship Band 『Landmarks』 (2014)
Tigran Hamasyan 『Shadow Theater』 (2013)
橋爪亮督グループ 『Visible / Invisible』 (2013)
あたりがぱっと浮かぶところで、ミュージシャン単位で言うと僕はEsperanza Spaldingの音楽はこの点をすごく意識しているように思える。それからヨーロッパとりわけ北欧の音楽にもこのスタイルは多くて、Portico Quartetなんかはまさにそんなバンドの一つだろう。
最後にこの点を早くから意識していたのはPat Metheny Groupであるという点も指摘しておきたい。
Texture of Sound
次はサウンドのテクスチャーについて。
このサウンドのテクスチャーという視点は長い間ジャズ界で忘れられていた感覚、あるいはジャズには必要と思われていなかった視点だと思う。
生の音楽・ライブの音楽であるジャズに加工は必要ない、あるいはどれだけ加工なくパッケージングできるかに力が入れられていた状況から、しだいに音の質感、テクスチャー感覚を意識した作品が作られるようになっていった。
これはテクノロジーの変化もさることながら、ヒップ・ホップやポスト・ロックといった音楽が与えた影響と言っていいだろう。
最近これを強く意識したのはBADBADNOTGOODの新作『III』だった。
ここでは明らかにヒップ・ホップのサウンドを意識した加工が施されており、ドラムのエフェクトの掛かり具合だけをとってみても「テクスチャー感覚」という言葉を説明するには充分だと思う。
この感覚を広く知らしめたのはやはりRobert Glasper『Double Booked』(2009)の後半、エクスペリメントでの演奏だろう。
コンプレッサーが掛かったようなキックや左右に散りばめられたピアノのサウンドといった積極的なミックスはRobert Glasper及び彼のエクスペリメントのその後の作品にも見て取れる。
同じような感覚の音楽と一つの特徴としてはゼロ距離のドラムで打ち込みっぽくミックスしていることがあると思う。
ここでは
Maurice Brown 『The Cycle of Love』 (2010)
Rafiq Bhatia 『Yes It Will』 (2012)
RUSCONI 『Revolution』 (2013)
Mehliana 『Taming the Dragon』 (2014)
Taylor McFerrin 『Early Riser』 (2014)
rabbitoo 『national anthem of unknown country』 (2014)
を挙げておこう。
最後になったが、もちろんこの2つの感覚というのは同時に持ち合わせていることもある、というか両方もっていることの方が多い気がする。
テクスチャー感覚とアンサンブル感覚の2つを持ち合わせてる例として、このブログの始動テーマにもなったDerrick Hodge『Live Today』のEPKドキュメンタリーでこの記事の結びにかえようと思う。
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